ニュージーランドホップを使う理由

こちらが、今私の醸造所にあるホップの一覧。

カスケード(アメリカ)
コロンバス(アメリカ)
ザーツ(チェコ)
ネクタロン(ニュージーランド)
ネルソンソーヴィン(ニュージーランド)
パシフィカ(ニュージーランド)
パシフィックサンライズ(ニュージーランド)
モトゥエカ(ニュージーランド)
ラカウ(ニュージーランド)
ワイメア(ニュージーランド)

お気づきの通り、ニュージーランド産がとても多い。
理由は私がニュージーランドで2年半くらい、生活していたことがあるからだ。
ホップの種類は世界で300種類以上ありその数は増え続けているという。(出典:https://bet-tech.co.jp/world-hop-list/

それらを組み合わせて、新しい味わいを生み出していくのが、醸造の醍醐味ではあるのだけれど、全てを使いこなすのは不可能だ。
何か自分の得意分野や指針を作った方がいいと、僕はかつて住んでいたという理由でニュージーランド産を中心に選ぶようになった。



ニュージーランドに住んでいたとはいえ、その時はクラフトビールについてもほとんど知らなかった。
最初の2年に関しては高校生だった。
でも、30歳で半年間、ニュージーランドにいた時にはクラフトビールとの出会いがあったと言える。

僕は高校時代のホームステイ先に再び居候することになり、その家の息子ダニエルと仲が良くなった。彼はバイクの修理工だった。国内屈指のレーサーのバイクをいじっていたことからも、かなり腕のある技術者だったのではないかと思う。

「バイク乗り仲間でビールを作っているやつがいるから飲みに行こう」と誘われ、行った先にいたのがEpic Beer(https://epicbeer.com/)のご一行だった。

当時、僕はフリーのライターみたいなことをしていたので、マーケティング担当に彼らのビールのことを聞いた。当時は苦味の単位であるIBUについても全く知らなかったが、分かったのは彼らのビールはどれもとても苦いということだった。すなわち、IPAだ。

アメリカンスタイルのIPAを得意とする醸造所で、”Need.... More.... Hops....”と書いたゾンビのTシャツを着ていた。ニュージーランドホップはそれほど多く使っていないというのが、このストーリー上の皮肉である。

結局、その取材は記事にならなかった。Epicなんちゃらというビール会社がアメリカにもあり、国外に及ぶマーケティングでは彼らへの配慮が必要だということだった。

とはいえ、彼らのビールはおいしかったし、仲良くもなった。マーケティング担当の方の夫とは、一緒にヨットで海に出た結果、エンジンが壊れて、一晩ともに漂流した。

というのが、僕とニュージーランドのクラフトビールのささやかなつながりだ。
もう5年以上ニュージーランドには行っていない。
バイク修理のダニエルは亡くなってしまったし、ビールの関係者ともやりとりはない。
それでもまたニュージーランドに行って、今度はクラフトビールをテーマに旅してみたいと思う。

最近、ニュージーランドピルスナーというクラフトビールを作った。
ニュージーランド産ホップであるモトゥエカのライムのような柑橘の香りが主役で、パシフィカの甘い花の香りもそれを下支えしている。
2カ月ほどかけて丹念に熟成、発酵させたので、醸造所がある穴吹川の水のように、クリーンな味わいだ。

ぜひ飲んでみてください。

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